第2回高専起業家サミット 開催レポート

2025年2月24日(月)、25日(火)に一橋講堂にて行われました、第2回高専起業家サミットの模様をご報告します。

  • 当日の出場者
    36チーム / 158
    • ソーシャルドクター部門 17チーム
    • イントラプレナー部門 19チーム
  • エントリー高専数
    全国3031キャンパス

開催概要

第2回開催の特徴は、「ソーシャルドクター部門」と「イントラプレナー部門」の2つに分かれた点です。
また、一次選考通過チームには起業家メンターが付き、発表会当日に向けてビジネスプランをブラッシュアップ。
メンタリングを通して、ビジネスモデルを大きく改善したチームもあり、一線で活躍する起業家から良い刺激を受けていました。
当日はそれぞれの部門でピッチ、ポスター発表による審査で受賞者が決定しました。

審査部門

  • イラスト:ソーシャルドクター部門

    ソーシャルドクター部門

    多様な社会課題に挑み、地域コミュニティのより良い未来を築くアイデアを発掘・支援する部門です。
    医療・福祉・教育など領域を問わず、テクノロジーと情熱を掛け合わせて実践的な解決策を生み出し、社会全体の健やかな成長を目指します。

  • イラスト:イントラプレナー部門

    イントラプレナー部門

    既存組織の枠組みを越えて新たな事業や価値を創出する人材を発掘・支援する部門です。
    社内や学校など既存のコミュニティ内から生まれる革新的なアイデアを実現し、組織と社会に変化をもたらすことを目指します。

  • 各審査部門ごとにピッチ・ポスター発表による審査を実施

審査基準

今回の高専起業家サミットでは、以下5点が審査基準として設けられました

  • 新規性・独自性
  • 市場性・将来性
  • 実現可能性
  • 熱意
  • 論理性

ソーシャルドクター部門

最優秀賞

  • サステナブルビューティー:未来をつなぐ、海と子供たちにやさしいコスメ
  • 沖縄高専 / Bellearc
写真:最優秀賞チーム表彰時の様子
写真:最優秀賞チーム表彰時の様子
画像:最優秀賞チームのプランシート
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審査員コメント

村上 智則 氏 
(公益財団法人日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 准チームリーダー)
最優秀賞おめでとうございます。海洋プラスチックごみという海洋環境に関する問題と、化粧品原材料に内包された児童労働搾取に関する問題——このワールドワイドな社会問題2つを掛け合わせるというアプローチに関心を抱きました。世界の問題に対するロールモデルになりうる起業プランだと思いますので、ぜひ頑張って実装していただきたいです。

優秀賞

  • CoDog:一緒にという意味のCoと犬型ロボットのDogを組み合わせた製品名
  • 一関高専 / innodroid
写真:優秀賞チーム表彰時の様子
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審査員コメント

宇佐見 晃 氏 
(東北大学 スタートアップ事業化センター 特任准教授)
優秀賞おめでとうございます。ロボットの姿が面白く、早く社会実装していただきたいですね。高齢化に向けた、山間部に入るロボットを考えるのは大変だと思います。収穫面での「農作物をどのようにカットしカゴに入れるか」という課題も含め、農家の方の意見を聞きながら、引き続き頑張っていただければと思います。

イントラプレナー部門

最優秀賞

  • 新時代の口腔ケア “Properio AI”
  • 仙台高専 広瀬キャンパス / 杜の都 Oral Wellness
写真:最優秀賞チーム表彰時の様子
写真:最優秀賞チーム表彰時の様子
画像:最優秀賞チームのプランシート
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審査員コメント

若原 昭浩 氏 
(国立大学法人豊橋技術科学大学 学長)
最優秀賞おめでとうございます。プレゼンテーションも良かったのですが、1番良かったのは着眼点です。みなさんが使っている歯ブラシにアタッチメントを付けて、しかも歯医者さんが用いている指標に準拠するという、「世の中で評価されている手法に則り、それをローコストで提供する点」で、普及する可能性が高いと思いました。アタッチメントを付けるという手段も、高専生らしいですね。私もぜひ買いたいと思っていますので、ぜひ実装に向けて頑張ってください。
道古 薫 氏 
(株式会社FUNDINNO シニアマネージャー)
最優秀賞おめでとうございます。お子さまからお年寄りの方まで、みなさんが利用できるサービスになると思います。非常にスケール性を感じました。私もぜひ使いたいと思っておりますので、事業化を目指して頑張ってください。

  • 持続可能な生態系サービスを提供する『Smart AgreenTech』
  • 沖縄高専 / ゆがふぁーむ (from ミヤギ農家)
写真:優秀賞チーム表彰時の様子
画像:優秀賞チームのプランシート
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審査員コメント

中原 大輔 氏
(本田技研工業株式会社 コーポレート戦略本部 コーポレートデベロップメント統括部 コーポレートベンチャリング部 イグニッション推進課 課長)
優秀賞おめでとうございます。非常にユニークな視点でアプローチされていると感じました。審査では「効果・安全性・運用性・コスト」の4点を見ておりましたが、この内「効果」は大分見えてきていると思います。残りの3点も明らかにしていけば、きっと売れる商品になっていくと思いますので、ぜひ引き続き頑張ってください。
齊藤 幹大 氏 
(日本政策金融公庫 創業支援部 グループリーダー)
優秀賞おめでとうございます。「地表に向けた音響刺激で微生物を活性化させる」海外の論文を基に、さらに「地中の微生物まで活性化させる」プランを作り込んだ点、機械を作り実証する段階にまで至っている点が素晴らしいと感じました。ぜひ、受賞がゴールではなく、社会実装・収益モデルの形成まで進められるよう頑張ってください。
Honda IGNITION賞
提供:本田技研工業様
  • 持続可能な生態系サービスを提供する
    『Smart AgreenTech』
  • 沖縄高専 / ゆがふぁーむ (from ミヤギ農家)
写真:HONDA IGNITION賞受賞チーム
オーディエンス賞
ポスター発表に対し、協賛企業・観覧者の投票によって決定
  • プロリン -ホテル・ブライダル業界の
    マッチングサポートと業務効率化-
  • 神戸市立高専 / Affinity Nexa
写真:オーディエンス賞受賞チーム
写真:池村隆司氏

審査員長講評

国立大学法人豊橋技術科学大学 学長
若原 昭浩

みなさんのアイデアは非常に発想が豊かで、事業計画もよく練られていたと思います。近い将来に製品を見ることができるのではないかと、充分に実感しました。

残念ながら受賞に至らなかったチームも、受賞チームとは本当に僅差でした。その僅差を生み出したのは「プロトタイプをしっかりつくり、その基礎データをとること」だと思います。コンセプトだけでなく、そのコンセプトを達成するアイデアに説得力を持たせることが重要です。とは言っても、素晴らしいコンセプトを持つアイデアが多く、1歩2歩さらに詰めることで、光るものになると思いました。

実は、私は42年前に高専を卒業しています。私が学生のときは、今回の高専起業家サミットのような「ビジネスプランを発表する場」が誕生するとは夢にも思っていませんでした。今の高専生は非常に社会実装力が高い人材として育っていると、高専卒業生としての率直な感想を抱いています。これを機会にさらに技術力を高めつつ、社会の問題を深く掘り下げ、国際社会の問題解決に資する人材として活躍することを祈念して、本日の講評とさせていただきます。
本日はおめでとうございました。