スタートアップ部門

渋滞の根本的解決策 ブレーキ連鎖を断ち切るVigilite(ヴィジライト)

チーム名
MiraiPath
高専名
沖縄高専
このプランのビジネスプラン概要
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このアイデアで解決したい課題は何ですか?

高速道路での渋滞は、年間100億円以上の経済的損失をもたらす社会課題である。この渋滞の88%は、トンネルやサグ部、合流地点などで、ドライバーの無意識的な速度低下や急ブレーキが連鎖的に発生することで起きる。特に、車間距離の不適切な維持が、主な原因である。既存の運転支援システムは、渋滞発生後の警告に留まり、根本的な解決には至っていない。そのため、渋滞の「芽」を摘む新しいアプローチが必要とされている。

その課題の解決のために、今までに調べたこと・実行したことを教えてください。

渋滞の根本原因を特定するため、NEXCO東日本の調査資料や交通工学の論文を徹底的に分析した。その結果、渋滞の大部分が、特定の場所(トンネル、サグ部、合流地点)における車両の急減速から始まることを確認した。これらの場所で、ドライバーが心理的な圧迫感を感じ、無意識的にブレーキを踏んでしまうことが渋滞の引き金となる。この知見に基づき、ブレーキの連鎖を断ち切ることが最も効果的な解決策だと結論付けた。

このアイデアで提供する製品・サービスは何ですか?

高速道路などスピードが出やすい場面でも、適切な車間距離を保てるように設計されたトラフィックライトシステム「Vigilite(ヴィジライト)」を提供する。超音波センサーで後続車との距離を測定し、人間工学に基づいた点滅パターンでドライバーに注意を促す。心理的効果により後続車は自然に距離を保ち、結果としてブレーキ操作の頻度を50%以上減少させることができる。

その製品・サービスは、例えば「誰が」「どこで」「どのように」提供するものですか?

誰が: 自動車ドライバー。
どこで: 高速道路や交通量の多い都市部の道路。
どのように: 後方の視認性を高めたトラフィックライトを自動車のリアに取り付ける。このシステムは、後続車との車間距離をセンサーで常時監視し、距離に応じた光の点滅パターンを自動で発信する。これにより、後続車は適切な車間距離を意識し、不必要なブレーキを回避できる。ドライバーの操作は一切不要であり、誰でも簡単に利用できる。

提供する製品・サービスのユーザーはどんな人・どんな組織ですか?ユーザーの具体像(年齢・性別・家庭環境・趣味・仕事等)を考えて教えてください

ユーザーは、日々の運転で渋滞に悩まされているすべての人々である。
通勤ドライバー: 毎日高速道路を利用するビジネスパーソン。
ファミリー層: 週末のレジャーで渋滞に巻き込まれることを避けたい家族。
プロフェッショナル: 運送業やタクシー業など、時間厳守が求められるドライバー。
渋滞常習地域住民: 常に交通量の多い道路を走行せざるを得ない人々。

提供する製品・サービスの一番のウリは何ですか?

一番のウリは、渋滞を「事後的に解消」するのではなく、「未然に防ぐ」という点にある。車間距離が適切な場合、ライトは緑色で、ゆったりとした呼吸のリズムに合わせて、ゆっくりと明滅する。これにより、後続車ドライバーの心拍数を落ち着かせ、リラックスした状態で運転を続けられるよう心理的に働きかける。車間距離が詰まると、リズムが速まり、黄色へ。さらに接近すると、赤色で短い周期の点滅となり、減速を強く意識させる。

提供する製品やサービスについて、すでに存在する類似製品やサービスはありますか?
あるならばそれらと比較して優れている点(独自の価値)を教えてください。

スバルの「アイサイト」やトヨタの「セーフティセンス」は、車間距離が詰まった際に警告を発するため、ドライバーが急ブレーキを踏みやすく、結果的に渋滞の連鎖を招く可能性がある。一方、我々のヴィジライトは心理学に基づく光パターンで、ブレーキ操作の前段階から緩やかな減速を促し、ブレーキ連鎖を未然に防ぐことで渋滞の発生を抑制する点に独自の価値がある。

プロトタイプを第三者に見てもらい、出た意見を踏まえて実用性を高めるためにはどのような改善が必要か、もしくは既に改善した場合はどのように改善したのか、教えてください。

当初は渋滞発生地点に設置する「ペースメーカーライト」として構想していたが、高専教職員から「車両搭載型にすれば汎用性が高く、多くのユーザーに届けられる」との助言を受け、車載型へと改良した。この変更により、対象を高速道路管理会社から一般ドライバーへ拡大でき、実用性と市場性が飛躍的に向上した。このフィードバックは、ビジネスモデルの方向性を定めた重要な転機となった。

起業までの具体的なスケジュールをステップごとに時系列で記述してください。
(例:プロトタイプ開発、マーケティング準備、資金調達、法人設立など)

1年目は、最初の3ヶ月で事業計画と収益モデルを策定し、技術ロードマップを明確化する。続く6ヶ月で実車テスト可能なプロトタイプを開発し、性能検証と特許出願、資金調達準備を進める。2年目には製造委託先など外部パートナーとの連携を確立し、量産体制とマーケティング戦略を構築。3年目初頭に製品を市場投入し、顧客獲得とブランド認知向上に注力する。

起業後の事業展開について、目標・戦略・成長イメージを具体的に記述してください。
(例:売上目標、顧客獲得計画、サービス拡張、海外展開の可能性など)

起業後1年目は、ECサイトや全国の自動車用品店で個人向け販売を開始し、SNSを活用したデジタルマーケティングでアーリーアダプターを獲得、初年度5万台販売を目指す。2年目以降は運送・バス会社など法人市場に参入し、フリート車両への導入提案で販路を拡大。3年目には欧米・アジア市場へ展開し、年間売上50億円規模の企業成長を目指す。

このビジネスでは「なぜ」利益がでると考えていますか?収益とコストの観点から想定する収益モデルごとに教えてください。

収益モデルは「製品販売による直接提供」と「定期的な買い替え需要の創出」を組み合わせた構成である。製造コストをサプライチェーン最適化で抑えつつ高品質部品を採用し、高付加価値製品として単価を高める。さらに、新機能追加やデザイン刷新、バッテリー強化などのバージョンアップを定期的に行い、継続的な買い替え需要を促進。これにより安定した収益を確保し、開発費の回収と持続的成長を実現する。

このビジネスプランで起業する場合の課題は何だと考えますか?

本事業の最大の課題は、技術的信頼性の確立と法規制への適合である。センサーの精度を天候や道路状況に左右されず維持し、誤作動を防ぐための高度な技術開発が求められる。また、後付け部品として国の安全基準を満たす法的対応も不可欠である。さらに、自動車メーカー純正システムとの差別化を図り、独自性を社会に広く訴求する戦略的マーケティングが必要であり、これらを克服することが成功の鍵となる。

全体を振り返って、このアイデアを思いついた背景と課題解決に向けた思いを教えてください

新型コロナによる移動制限の緩和後、増加した高速道路の渋滞を目の当たりにし、経済活動や環境問題(CO2排出)に与える影響の大きさに危機感を覚えた。このアイデアは、技術的な解決策ではなく、人々の運転行動を心理的に変えることで社会全体にポジティブな変化をもたらすことを目指している。このシステムを通じて、ドライバーがより安全で快適に移動できる社会を実現し、経済の効率化と持続可能性に貢献したいと考えている。