プロトタイプ部門

塩と砂の再生科学-微生物で挑む次世代脱塩プロセス

チーム名
かつてパン作ってた僕ら
高専名
和歌山高専
このプランのビジネスプラン概要
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このアイデアで解決したい課題は何ですか?

海砂は豊富な資源であるにもかかわらず、砂中の塩分のため建築材料としての利用が難しく、採取・廃棄時に環境負荷を生じています。本アイデアは、微生物のイオン吸着能と電気脱塩技術を組み合わせ、海砂から塩を効率的かつ低環境負荷で除去し、建材として再利用可能にすることで、資源循環と海洋環境保全を両立することを目的とします。

その課題の解決のために、今までに調べたこと・実行したことを教えてください。

既存の脱塩技術として、海砂洗浄では高温水洗や界面活性剤処理、逆浸透膜などが用いられているものの、コスト・エネルギー負荷が高く、再利用性に乏しいことを確認しました。また、Halomonas属・Salinivibrio属などの耐塩性微生物がEPS(多糖)やバイオサーファクタントを産生し、Na?吸着や塩分剥離に有効である報告を調査しました。

このアイデアで提供する製品・サービスは何ですか?

海砂の塩害問題を、微生物と化学のハイブリッド技術で解決。脱塩した砂は安全な建材に、回収した塩は産業用・非食用資源として再利用。廃棄物を二つの価値ある製品に変える、持続可能な循環型システムを提案します。

その製品・サービスは、例えば「誰が」「どこで」「どのように」提供するものですか?

高専発の技術を活用し、自治体や建設会社と連携。海岸にコンテナ型プラントを設置し、地元の海砂を処理。脱塩砂は安全な建材に、回収塩は凍結防止剤などの産業用塩として販売。循環型社会を実現します。

提供する製品・サービスのユーザーはどんな人・どんな組織ですか?ユーザーの具体像(年齢・性別・家庭環境・趣味・仕事等)を考えて教えてください

50代男性(建設資材担当):海岸近辺の工事を頻繁に手がける現場監督。資材コストと環境規制の両立に頭を悩ませている。
40代男性(自治体土木課):予算制約がありながらも、地域の廃棄物問題と冬期の融雪対策を同時に解決する手法を模索中。
30代(化学メーカー調達担当):環境配慮型原料を探し、企業のSDGs目標達成に貢献したいと考えている実務者。

提供する製品・サービスの一番のウリは何ですか?

最大の強みは「海砂を二つの価値に変換する循環モデル」です。 問題視される海砂を、単に処理するだけでなく、建設資材と産業用塩という二つの市場価値ある製品に同時に再生。従来のコストセンターを収益センターに変える、画期的なサーキュラーエコノミーを実現します。

提供する製品やサービスについて、すでに存在する類似製品やサービスはありますか?
あるならばそれらと比較して優れている点(独自の価値)を教えてください。

既存の砂洗浄技術は物理的洗浄による「脱塩のみ」が主流です。当プランは微生物・化学で脱塩と塩の回収を同時に実現。廃棄物を「建材」と「工業用塩」の二つの収益源に変え、コストセンターからプロフィットセンターへ転換する点が革新的であり、優れている点といえます。

プロトタイプを第三者に見てもらい、出た意見を踏まえて実用性を高めるためにはどのような改善が必要か、もしくは既に改善した場合はどのように改善したのか、教えてください。

本ビジネスアイデアを本校の教員の先生に見ていただいた結果、「研究としては非常に面白いが、ビジネスとして成立させるにはスケールと安定性の検証がまだ甘い」といったアドバイスをいただきました。このアドバイスを参考に、実験室レベルで検証するためのプロトコルを作成。同時にアイデアをビジネスにつなげるための資金・資材の流れを検討しました。

顧客となるユーザーと直接対話し、プロトタイプを改良した・もしくは改良を予定している場合はその内容を教えてください。

現在、地元建設会社と自治体土木課へヒアリングを予定。現場のコスト感覚や運用課題を直接聞き取り、装置のコンパクト化やランニングコスト最適化に反映させていきます。

この製品・サービスの核となる技術について、特許等を取得/出願している場合は詳細(発明者・特許番号/特許公開番号等)を教えてください。

現在のところ、特許は出願していません。しかし、本アイデアは「微生物を用いた海砂脱塩と塩分回収を統合したハイブリッドシステム」 という技術コンセプトそのものが核となる知的財産です。特に、耐塩性微生物の選択と培養方法、およびCDI( capacitive deionization)とのプロセス統合に独創性があり、特許化を目指しています。

この製品・サービスの市場動向や市場規模について今までに調べたことがあれば教えてください。また、その動向を踏まえ、ビジネスモデルを検討したことがあれば、その内容を教えてください。

再生砂市場は成長傾向にあり、2023年の17.8億ドルから2030年には27.9億ドルに達すると予測されています。本ビジネスモデルは、従来の物理処理と異なり、微生物と化学技術を組み合わせた脱塩プロセスで差別化し、成長が期待される再生砂市場に参入可能です。

全体を振り返って、このアイデアを思いついた背景と課題解決に向けた思いを教えてください

コンクリート用の良質な天然骨材が不足している現状を知り、海砂を代替できれば大きな市場と資源が得られると考え、このビジネスプランを着想しました。微生物を用いた塩分抽出法は前例が少なく、成功すれば大きなアドバンテージになると確信しています。